カゲロウ

子どものころに暑い日差しの中追いかけた陽炎。

どこまで走っても、どこまで追いかけても消して手の届くところにはなく、まるで自分から逃げているような、そんな錯覚を思えた。

夏の日の照りつけは日々増すばかりで、右を見ても左を見ても未知の上には陽炎が存在する。

もしもこの陽炎が本当に水であるのならば、手に入ることは決してないスピリチュアル的な何かを持っていて、手に入れた瞬間に自分の願いがかなうものなのだと思う。

しかし決して触れることのできない―存在―である限り、その願いも叶うことはなく、いつまでも胸を熱くしても手に入れることはできない。

自分が胸を熱く追いかけているものも、この陽炎のように本当の意味では手に入れることができず、手に入れたと思っても再び遠い存在になるだと確信している。

もしも本当の意味で手にできたのであれば、きっとそれはもともと自分の手の内にあったものなんだろう。

夏の日に突然現れて消える陽炎の存在は、ふと思い出したように―夢―を思い出させて消えていくのである。